Vol.2 地図訂正(シリーズT)(平成8630日発行)

Q1.地図訂正とはどういうことですか。

A 不動産登記法における地図訂正の意義は次の様な事をいいます。
不動産登記法では、権利の客体となる土地の物理的状況を登記簿という公簿に示し、なおかつ地図はその登記簿の土地を現地に特定させています。出来た当時の地図が正確であり、その後の登記の申請が正確であり、地図への記入が正確になされていれば、今日の「地図訂正」の問題は出て釆ないのですが、何らかの原因で地図と現地が異なるものが出て来ています。このように、地図の記載に誤りがある場合に、正しい内容に改めることが、地図訂正です。


Q2.地図にはどんなものがありますか。

A 地図には次の種類があります。
@旧土地台帳附属地図
改組図・字限図(あざぎりず)・地引絵図(じびきえず)・更正図・耕地整理確定図・旧自農法による確定図・土地改良法による所在図等をいい、昭和35年の登記簿の一元化作業完了以前に備え付けられた地図をいいます。
A土地改良登記令による土地所在図
土地改良登記令622号の規定により登記所に送付された地図
B土地区画整理登記令による土地所在図
土地区画整理登記令622号の規定により登記所に送付された地図
C旧自農法による確定図
昭和23年大蔵・農林省令第25条の通知により登記所に送付された確定図
D農地法による土地所在図
昭和27年に制定された農地法に基づき「農地法による不動産登記に関する政令(昭和28年政令第173号)」が出され、それによって不動産の表示の登記嘱託がなされた際に登記所に送付された土地の所在図
E地籍図
国土調査法の成果図で、同法第201項により登記所に送付された地籍図 (不動産登記法第17条地図に指定されているものが多い)
F法務局(地方法務局)作製の法第17条地図
Gその他の地図


Q3.地図にはどんな特徴がありますか。

A 地図には次の様な特質があります。
前にご説明しました地図の種類のうち、旧土地台帳附属地図と地籍図が、登記所に備え付けられた地図の8割を越えていますから、主にこの2種類の地図の特質をご説明します。地図の特質を知ることは、地図訂正の原因を知ることに大いに役立ちます。

@旧土地台帳附属地図
旧土地台帳法施行細則第21号の規定に基づき備え付けられていた地図でしたが、旧土地台帳法施行細則第2条には、この地図の定義づけとして「土地の区画及び地番を明らかにするものでなければならない」としか規定されていませんでした。ですから、地籍図のような精度もありませんし、面積・辺長・隣接地との位置関係等についても必ずしも信頼できるものではありません。しかしながら、旧台帳附属地図が作られた変遷を理解しますと、作製当時の関係者がいいかげんに作製したものでもなく、精度を全く無視して作製したものでもなく、土地の所有権界を意識して作製したものであることが分かって来ます。いわゆる「公法上の境界」が創設された地図であったことには違いがないのです。例えば
a.地券の発行(壬申地券)(改正地券)
b.地租改正条例(明治6年)の施行
c.地租条例(明治17年)の施行
d.登記法(明治19年)の制定
e.土地台帳規則(明治22年)の施行

これらの事業を実施するたびに、地券と現地を一致させるべく、見取図・地押調査図・更正図を作製し地券台帳(土地台帳の始まり)と共に調製し私人の所有権を確立させてきたのです。当然、官民の境界についても明確に区分し、官有地にさえも地番を付していました。


A国土調査法による地籍図
a.国土調査法の意義
国土調査法(昭和26年)による成果図のことを指し、その目的は、国土の開発・保全・利用の便宜に資するとともに、地籍の明確化を図るために、科学的・総合的な実態調査を目的としています。旧来の台帳附属地図では、精度的に問題があり現代の社会経済上の要請に対応出来ないところから、正確な土地の記録を近代的な測量手法により現地復元能力のある地図を整備することが必要となっています。
b.地籍図の特徴
土地の現地の地物との相対的位置関係によらなくとも、地図そのものから特定出来るようにするため、地球上(日本国上)の絶対的位置関係を表示しています。いわゆる、座標系という統一した骨組みによって組み立ててあります。例えれば、あなたの所有する土地は絶対的位置で示されており、他にはあり得ないという理論です。
c.国土調査と登記
国土調査法第20条第1項により、地籍図の成果が認証され、その成果が登記所に送付されますと登記簿の修正がされますが、次のような場合は、せっかく高い精度で実施された国土調査も登記簿に反映されないことがあります。
イ.筆界未定地
国土調査実施以前から境界に争いがある場合、土地所有者の確認が出来ない場合等が考えられます。
ロ.現地確認不能地
読んで字のとおりですが、例えば海の中とか道路の中、水路・池沼の中等が考えられます。
ハ.その他に国土調査実施中の分筆・合筆行為、国土調査実施の際の一筆地調査時に所有権以外の権利があるにもかかわらず土地の合筆の申し出をした土地が国土調査の成果として送付された場合等があります。



Q4.地図訂正の手続きはどうしますか

A 地図訂正の手続きには次の様なものがあります
@ 地図訂正の現状
土地の利用形態の多様化、土地の移動の頻繁さ、地価の高騰等から、土地登記簿と地図に関する問題が出ています。しかしながら、地図訂正事件の処理は表示登記事件の中でも複雑で困難な要素をもっており、しかも登記所に備え付けられている地図が多種多様であるが為、一般的・統一的処理方法が示されていません。

A 地図訂正の申し出
地図の訂正が何故申し出の方式を取っているかをご説明します。地図は職権で登記所に備え付けられるものですから、内容に変更が生じたり、誤りを発見したときは登記官が職権で変更か訂正をしなければならないのですが、登記官は、必ずしも地図と現地を把握している訳ではありませんから、分筆や合筆の登記が申請されたときに地図と照合することによって変更や誤りを発見します。この誤りを訂正する手続きは不動産登記法事務取扱準則第113条に規定されていますが、表示登記のように申請を義務付けてもいませんし、権利の登記のように権利の得喪変更を伴うものでもありませんから、登記ではないということから、利害関係人に申し出の機会を与えて、登記官に職権で変更、訂正をするよう促すのです。

B 地図訂正の態様
地図訂正の態様には次のようなものが考えられます。
a.所在位置の訂正
b.境(筆)界の訂正
c.地番の訂正(無地番の訂正を含む)
d.市町村長からの訂正(地方税法第381条第7項)

C 地図訂正申し出の一般的添付書類

地図訂正申し出の一般的な添付書類としては次のようなものがあります。
a.土地の所在図及び地積の測量図
基本的には訂正にかかわる土地の全部の地積測量図の添付となります。
b.利害関係人の境界承諾書
地図訂正は境界(筆界)の確認をすることによって、可能となる事案が多いので境界につき異議がない事が確認出来なければ訂正は困難です。法定添付書類ではありませんが、境界に異議ないことを登記官が確認をするために、実務上は印鑑証明書を添付しています。
c.訂正前の地形図、訂正後の地形図
d.地図訂正の立証資料
  イ・当該土地及びその境界にかかわる土地の実測図
  ロ.市町村が保管する図面等
  ハ・官公署またはこれに準ずる場所に保管されている図面
  ニ・地引絵図及び一筆限図等の地租改正に関する資料
  ホ.閉鎖された従前の地図
  へ.古老等、地域の事情に精通しているものの証明
  ト.隣接土地の所有者、借地人、管理人等関係者の証明
  チ.その他立証に足りる資料
等、あらゆる立証書面資料が要求されます。

D 地図訂正の判断についての注意点 
地図訂正の判断の根拠として、次のようなことに注意しなければなりません。
 
a・筆界の移動があったのかどうか(分筆ではないか・使用境界と所有権境界)
  b.公法上の境界なのか、創設的境界なのか
  ・登記所に備え付けられている地積測量図との関連性の確認
  d・地図訂正には、地積の更正の登記が伴うことが多いので更正の登記の必要性の確認
  e・地籍図等にあっては当該地籍図地域の精度区分の検討の有無



Q5.地図訂正の具体的事例を教えてください

A 地図訂正の具体的事例として何種かあげてみます。
@ 地番配列の訂正
この事例は地図に地番が付されて登記所に備え付けられた際(台帳附属地図備え付け当時)の原始的な誤りを訂正するもので、分筆登記・合筆登記等によって付された地番の誤りを訂正する事例とは異なります。
a.注意点
 
イ.土地の移転がされていながら便宜上地番の訂正をしていないか。
  ロ.土地区画整理地区にあっては、地積が極端に相違する場合は、イの事例が考えられます。
  ハ.創設された当時の地図の地番の付し方は、一般的には順序よく付されている。
b.例図
13番と14番の地番が逆になっている事例

A 空白地の地番記入及び合併
この事例は登記簿には存在するが地図にない場合の訂正をするものです。
a.注意点
  イ.創設期の地図(地引絵図・地押地図・更正地図)には、いわゆる○ ○地番があります。(飛び地)
  ロ.土地台帳に記載があるかを確認しなければなりません。(国有地か寺社地等か・免租地=2線引き畦畔)
  ハ.創設された当時の地図の地番の付し方のなかには、合併地番表示があった。
b.例図
地番が脱落している事例(142

B 分筆、合筆登記の未処理による訂正
地図訂正の大半を占める事例と言えます。
a.注意点
  イ.一元化以前の地積測量図があるか。登記所に備え付けられた測量図との整合性。
  ロ.市町村への通知用申請書に添付されていた地形図をもとに、市町村備え付けの地形図の確認が必要です。
  ハ.土地所有者が所有している分筆登記済証、合筆による所有権登記済証の有無。
b.例図
91112か合筆されているか地図上未処理となっている事例

C 地番の訂正
@であげた事例とは全く異なるもので、いわゆる分筆、合筆登記の未処理による訂正のうちで、単に地番の記入、消去の遺漏のものをいいます。
a.注意点
  イ.一元化以前の地積測量図があるか。登記所に備え付けられた測量図との整合性
  ロ.市町村への通知用申請書に添付されていた地形図をもとに、市町村備え付けの地形図の確認が必要です。
  ハ.土地所有者が所有している分筆登記済証、合筆による所有権登記済証の有無。
b.例図
合筆された地番(112)が削除されていない事例



 

Q6.現地を実測しました机実測図と法務局備え付けの地図(あるいは字限図)が著しく相違しています。分筆登記をしたいのですが、どうしたら良いのでしょうか。

A それでは、まず、分筆登記を考える前に実測図と地図が相違することとなった原因について考えてみましょう。この場合、原因を次の2つに大別できます。
(イ)実測図すなわち現地に誤りがある場合
(ロ)地図に誤りがある場合
特殊な場合として、(イ)と(ロ)が重なり合っていることもあります。
次に、現地を、法第17条地図地域と字限図地域とに分けて考えてみます。
1番目に、現地が法第17条地図地域にあって(イ)の場合とは、
@ 現地の境界確定にあたって、地図を無視あるいは地図の現地復元をしないで確定してしまったケース
(別図11−(イ)−@の事例

A 地図の現地復元はしたが、地権者の了解が得られないために、やむを得ず了解が得られる点で確定してしまったケース
(別図21−(イ)−Aの事例

B 過去に地権者同志で交換分合が行われ、分筆登記・交換登記等が未済で境界が異動しているものを、気付かずに確定してしまったケース
(別図31一(イ)−Bの事例

等があります。法第17条地図というのは、精度の程度こそあれ実測図ですから、境界確定にあたっては必ず現地復元をしてみる必要があります。

2番日に、同じく(ロ)の場合とは、
@ 地図の作製された時点において、境界確定や測量等のミスがあり誤りのある地図が出来上がってしまったケース(別図42−(ロ)−@の事例

A 地図が作成された後において、分筆登記がなされ分割線が誤って記入されたためにl誤りのある地図となってしまったケース (別図52−(ロ)−Aの事例

3番目に、現地が字限図地域にあって(イ)の場合とは、現地立会をきちんとやる限りにおいて、1−(イ)−Bの場合を除き、現地の誤りはまずありません。

4番目に、同じく(ロ)の場合とは、字限図の多くは精度を議論することが出来ないような見取り図的な図面がほとんどであり、隣接の地番さえ解らないようなものもあります。したがって、図面の誤りの原因も追及できないものが多く、ただ単に土地の形状が合わをいとか、隣接地との接合がおかしいといったものがほとんどです。

それではここで、それぞれどのような処理をして分筆登記にもって行くかを考えてみます。
1−(イ)−@の場合は、もう一度地図の現地復元をして境界確定からやり直す必要があります。
1−(イ)−Aの場合は、地権者の了解が得られか以上、現地を変える訳にはいきませんから、地図訂正(筆界の訂正)申出をしてから分筆登記を嘱託することになります。この場合、法第17条地図の筆界を訂正することは、当然地積の変更を伴いますから、変更を生じる土地全部について地積更正登記を合わせて行わなければなりません。
1−(イ)−Bの場合は、@のケースと同様に現地をやり直して、地権者同志で交換部分の分筆登記・交換登記等を為した後に、分筆登記を嘱託することになります。
2−(ロ)−@の場合は、地図そのものの誤りですから、1−(イ)−Aと同様に地図訂正申出・地積更正登記を為した後に、分筆登記を嘱託することになります。
2−(ロ)−Aの場合は、まず、管轄する法務局の登記官と相談する必要があります。 分割線の記入誤りが明らかであり、法務局内の地積測量図等の資料で訂正できる場合には、登記官が職権で訂正することもあります0また、地図訂正申出を促される場合もあります。
3の登記未了のケースは、1(イ)−Bと同様に処理します。
4の字限図が合わない場合には、やはり登記官と相談する必要があります。
地図訂正申出が望ましい場合と、字限図全体の精度等がひどいため一部分を訂正しても意味がないような場合もあります。地図訂正ができない場合の処理の方法としては、法務局の規格に基づいた地図を作製して納入してしまう方法、土地所在図を添付して分筆する方法等がありますが、いずれの場合にも登記官の指示に従って処理することが必要です。
最後に、実際によく見かけられる事例を紹介しましょう。 それは、道路等の拡幅の際の事例なのですが、法第17条地図地域において現在の道路の境界がずれており地図と符号しない場合があります。実際に地図を現地復元してみますと、道路が民間の土地に入り込んだり、民間の土地が道路上に入って来たりする場合があります。この原因は工事の際にずれた場合が考えられますが、始末が悪いのは、ずれた道路の境界線上に点々と境界標が埋設されている事です。このような道路を拡幅しようとした場合に、ずれた境界標を基に買収地を測量したのでは正しい結果が得られるはずもないのです。勿論、実測図と地図が一致しない事となるのです。この事例は、明らかに境界確定の誤りですので、1−(イ)−@と同様に境界確定のやり直しとなります。
(別図6)現道の境界がずれている事例

 



権 利 関 係

Q1.遺言の方式について説明して下さい。

A  もともと遺言(ゆいごん。いごんとも読まれる)は、ある人が死後に物事を言い残すこと、またはその言葉として、一般に遺族はできるだけこれを尊重し、その実現に努力すべきことが期待されています。民法は、このような社会の期待を背景として、遺言者の最終の意志を尊重し、その実現を保障する制度として遺言を認めているのです。
すなわち遺言の制度は、法律で定められた一定の事項について、遺言者の死後の法律関係が遺言で定められたとおりに実現することを法的に保障する制度なのです。
たとえば、遺言で共同相続人の相続分が定められていれば、遺言者の死後、相続人はその相続分に従って相続することになります。但し、遺言者の自由意思を制限するものとして、遺留分の制度が設けられていることに注意しなければなりません。
最近は、遺言を利用する人が増える傾向にあります。その背景として、核家族化の進行にともない、遺産相続に対する個人の権利意識が高まったことなどが挙げられます。と同時に、遺言が、相続に関する紛争を起こさないための有効な方法として考えられつつあるともいえるでしょう。
しかし、この遺言が法律的な効力をもつためには、遺言が正しい方式によってなされなければなりません。それでは民法の定める遺言の方式には、どのようなものがあるのでしょうか。遺言には、大別すると、通常の状態においてなされる『普通方式』と、まさに死が切迫しているような状態の場合になされる『特別方式』の二通りの方式があります。この二方式は、さらに細かく分けると次の七種類に分かれています。

ここでは、普通方式について簡単に紹介します。
@ 自筆証書遺言書…遺言者が、その全文、日付及び氏名を自筆し捺印します。簡便ではありますが、相続開始後に家庭裁判所の『検認』という手続きが必要とされます。
A 公正証書遺言‥・公証人と証人二人以上の立会を必要とし、遺言者が口頭で述べた内容を筆記していきます。費用はかかりますが、最も安全で確実な方式といえます。
B 秘密証書遺言…本人が署名押印した遺言書を封入封印します。内容は秘密にできますが、公証人と証人二人以上の前で、自分の遺言書である旨を告げる必要があります。


Q2.遺言による相続登記の手続きを知りたい。

A  人が死亡した場合、その遺産分割の方法としては
 @ 共同相続人の協議による場合
 A 家庭裁判所の審判又は調停による場合
 B 被相続人の遺言による場合
3つの方法があります。
財産所有者の立場からいえば、自分の意思を死後に伝えるための最良の法的手段は遺言です。遺言は、『自分の財産は自分の意思で自由に処分できる』という考えの上に成り立っています。つまり、遺産を相続人にどのように配分するかは、被相続人が遺言で自由に定めることができます。(ただし遺留分の問題があります。)
相続分指定等の遺言があれば、相続登記は遺言書の内容に従って申請書を作成すればよ いのです。遺産分割協議等による相続登記の場合には、被相続人・相続人に関するすべての戸除籍謄本、住民票、印鑑証明等を取り寄せて相続人を確定し、その意思を確認した上で、必要な書類を作成するという手間暇がかかります。その点、遺言書による相続登記はより簡単な書類の収集と作成ですみます。
たとえば、被相続人甲に配偶者と子供3人がある家庭で、甲が自己の全財産を長男乙に相続させる旨の遺言をして死亡したケースを考えてみます。
1)相続登記に添付する相続証明
 @ 甲死亡の記載のある戸籍謄本

 A 乙の戸籍謄本及び住民票
 B 遺言書正本 家裁への『検認』が必要となりますが、公正証書遺言の場合には不要です。その他、他の相続人の戸簿謄本・住民票等は要求されません。
2)相続関係説明図

遺言書による相続の場合には、甲と乙との関係を明示すれば足り、他の相続人の表示は一切不要です。
以上のように、遺言は相続に関する争いを防止する効果をもつことの他に、相続書類の収集においても、相続登記手続きの面においても、相続人の負担を軽減させる意味で極めて有効な手段であり、その積極的な利用が期待されています。



Q3.遺留分について説明して下さい。
A 遺留分とは、相続人のために残しておかなければならない相続分の割合をいいます。
被相続人が有する財産は、本来被相続人が自由に処分することが出来るのですが、仮に贈与あるいは遺贈により相続人以外の第三者に全財産を与えてしまった場合を考えてみると、これでは後に残った相続人の生活が脅かされることになります。また、被相続人の財産形成には家族の有形無形の協力が欠かせません。このような事情を考慮して遺留分の制度があるのです。
遺留分権を有する相続人は配偶者、直系卑属、直系尊属で兄弟柿殊には遺留分がありません。遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人である場合が相続財産の3分の1で、その他の場合は2分の1とされています。遺留分の侵害を受けた相続人は、その侵害を受けた範囲で遺贈又は贈与財産を取り戻すことが出来ます。これを遺留分の減殺といいます。この遺留分の減殺は遺留分が侵害されていることを知った時から1年、又は相続開始から10年以内に請求しなければなりません。


Q4.「相続関係説明図」について説明して下さい。

A 登記の申請に際しては、様々な添付書類が必要とされていますが、その添付書類の中には再使用するためなど、原本の還付が必要になる場合があります。この場合原本と相違ない旨を記載した写し(多くの場合は原本のコピー)を原本と共に提出することにより、その還付を受けることができます。相続登記の申請に際しては、「相続を証する書面」として原戸籍・除籍・戸籍謄抄本・遺産分割協議書など多数の書類を添付しなければなりませんが、これらの書面についても還付を受けられるのです。
この場合、そのまま全部の書類の写しを提出してもよいのですが、それでは申請者にとって負担が大きくなります。そこでそれらの写しに代えて「相続関係説明図」を提出することにより、その還付を受けられることとしたのです。
この「相続関係説明凱は、被相続人の相続関係を図式化した一種の家系図のようなもので、被相続人の最後の本籍、住所(登記簿上の住所と異なるときはその旨をほ載する)相続開始年月日、相続人の住所・氏名・生年月日、また特別受益者や相続放棄、遺産分割により当該申請に係る不動産を取得しない相続人がいるときは、その旨の記載もします。(その氏名の下に「特別受益者」・「放棄」・「分割」と記載します。)なお、相続人の住所を記載するのは住所証明書の還付を受けるためです。
参考として、一般的な相続を例にとって「相続関係説明凱を作成してみましょう。
この例は、被相続人に妻と子3人がおり、長男は幼時に死亡、長女は特別受益者で相続分は無く、妻と二男が遺産分割協議の結果妻が単独で相続することとなったものです。


 

Q5.相続登記未了の土地買収にあたり被相続人の相続関係を調査したところ、相続人が行方不明であることが判りましたが、今後の登記手続きはどのようにすればよいですか。

A  従来の住所または居所を去って容易に帰ってくる見込みのない者を不在者といいますが(民法第251項)、この場合生死分明なものも、不分明なものもそれぞれ不在者としております。(不在者の生死不明の状態が永続した場合に、不在者の死亡を擬制した民法第30条による失踪宣告とは別に考えることとします。)
そこで、買収するにあたり県市町村は、不在者の財産管理、保全につき法律上の利害関係人に該当するので、申立権者となって不在者である相続人の住所地の家庭裁判所(他に管轄がある場合もあります)に対し、不在者の財産管理人選任申立をします。
次に、その申立が認められると、家庭裁判所が選任した財産管理人は不在者の法定代理人となりますが、不在者に代わって不在者の財産を売却する行為は民法第103条に定められた権限を越える行為に該当するため、県市町村と売買契約するまえに、あらためて不在者財産管理人はその家庭裁判所に対し「不在者財産管理人の権限外行為の許可」審判申立をし、その許可を得たうえで県市町村と売買契約をすることになります。 登記手続きとしては、まず債権者代位権に基づき相続登記嘱託をしたうえで、不在者財産管理人の登記承諾書及州鑑証明書並びに不在者財産管理人選任審判書謄本(不動産登記法第35条第1項第5号)と不在者財産管理人権限外行為の許可書(同条同項第4号)を添付して売買登記嘱託をすることになります。


Q6.代位登記としても多用される登記名義人表示変更(更正)登記について詳しく説明して下さい。

A  登記名義人とは、登記簿上の不動産の権利に関する登記の現在の名義人(権利者)として記載されている者のことです。この登記名義人の表示(住所及び氏名等)は、現在の表示と一致していることがのぞましく、これは、現時点における登記名義人を正確に公示することを目的としている登記簿の性格から要請されるものです。したがって、登記簿上の登記名義人の表示が、その住所や氏名等の変更により実際の表示と一致しなくなった場合に、これを現在の表示に改めるためにする登記を「登記名義人表示変更登記」といいます。また、不動産の権利取得の登記のときに錯誤又は遺漏があり、実際の表示と登記簿に記載されている表示が一致しないときに正しい表示に改める登記を「登記名義人表示更正登記」 といいます。
このように、登記名義人表示変更登記は、登記名義人自体(登記権利者)になんらの変更がなく、ただ登記名義人の表示のみを変更した場合に限られるわけです。また、登記名義人表示更正登記のできるのは、権利には誤りはないが、その表示のみに誤りがある場合に限って認められるもので、買収等の嘱託登記申請の前提として、ごく一般的に行われる 登記(代位登記)でもあります。
登記名義人表示変更(更正)の原因としては、変更には、住所の移転、法人の本店又は主たる事務所の移転、氏名の変更、商号又は名称の変更等。更正には、錯誤、遺漏等があります。たとえば、「住所の移転」とは住民票に記載された移転の日であり、登記簿には「年月日住所移転」と記載されます。「氏名の変更」とは改氏・改名のことであり、改氏・改名には、婚姻・離婚・養子縁組・離縁・家庭裁判所の許可を得てする氏の変更又は名の変更等があります。これらの氏名の変更の日付は、戸籍の届出等によって効力が生じるので、その日が登記原因の日となりますが、これらの場合は、単に「年月日氏名変更」とのみ登記簿に記載されることになります。
登記名義人表示更正登記における登記原因は、「錯誤」又は「遺漏」であり、その更正の原因となる年月日の記載はなされません。
これらの登記名義人表示変更(更正)登記は、権利の帰属主体にはなんら変更がないの に、現在の時点における登記名義人を正確に公示するというものにあるので、これらの登記の申請には、変更(更正)を証する書面を添付しなければなりません。変更を証する書面には、登記簿に記載された登記名義人の住所・氏名と関連づけられる証明でなければなりません。たとえば登記名義人の住所が数回にわたって移転している場合には、中間を省略して、ただちに現在の住所に変更することができます。この場合には、その数回の移転又は変更を証する書面、すなわち、住所移転の経過を関連づけられる各旧住所地の除かれた住民票の写し又は戸籍の附票によって明らかにしなければならないことになっています。
登記名義人表示更生登記の場合には、更生の対象となる登記名義人の表示が、誤ったものであることを証する書面を添付してすることになりますが、具体的にどのようなものがその証明書に該当するかは事案によって異なり、変更を証する書面のように画一的ではありません。何をもって更正を証する書面とするかは、ケースバイケースで検討しなければなりません。



Q7.前間に関連して、変更(更正)を証する書面と登記簿上の表示の変更経過の関連性を証明できない場合、どうするのでしょうか。
A  除かれた住民票、あるいは改正された住民票又は戸籍の附栗は、その保存期間が経過すれば廃棄されてしまいますそのため、住所等に変更を生じた後長年にわたって放置しておくと、現在入手できる住民票や戸籍の附栗によっては、登記簿上の表示と現在の表示との変更の経過を証明できない場合も生じます。この場合、まず、役場で発行される当該不動産に係る「納税証明書」の住所氏名の表示が、住民票等の表示と一致するときは、「納税証明書」を添付することによって更にその「所有証明の写」の表示も一致しないときは、所有者が当該不動産を取得したときの「登記済証」(権利証)を添付することによって変更登記を行うことができます。